【國鐡廣嶋に革命を起こした車両】JR西日本の227系電車を紹介!

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皆様、こんにちは。

チームネットラボのU5swです。

今回は広島地区のJR在来線に革命をもたらした車両、227系電車について詳しく説明していきます!

現在、広島地区の定期列車は全て227系に統一されており、JRを使う方は必ずこの車両に乗って移動されているでしょう。その227系誕生の経緯や、統一されるまでの流れを、私が記録したものも交えながら紹介して行きます。

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227系のデビューとそれまでの背景

227系とは?

227系電車は、2015年3月に広島支社で運行を開始したJR西日本の直流近郊型電車です。広島のJRの印象を一新するため、および、広島の象徴とも言われる「宮島の大鳥居」や、広島県木である「もみじ」、プロ野球チーム「広島東洋カープ」のカラーである赤色を車体に採用し、先頭車の転落防止幌を「羽」に見立てた(?)ことから、「Red Wing」の愛称がつけられています。

227系導入前の広島

2019年3月まで広島支社で運行していた115系

227系が導入する前の広島のJRは、まったくと言っていいほどの古い車両のオンパレードでした。

上の画像の115系という国鉄の近郊型電車をはじめ、103系、105系といった国鉄の通勤型電車しか走っておらず、1987年に国鉄がJRに民営化されてから25年が経過しても新たな車両が導入する気配はまったくありませんでした。

これは京阪神を中心としたアーバンネットワークへの新車導入やサービス向上に重点が置かれていて、中々手がつけられなかったということが考えられますが、あまりにも古い車両ばかりだったため、主に鉄道ファンから「國鐡廣嶋」という愛称(?)がつけられていました。事実、227系導入前の最新型車両は1982年に導入された115系3000番台だったので…

115系の2ドア車バージョンの3000番台。
広島地区からは227系導入後にすぐ撤退し、現在は岩国〜下関間で運行中。

このまま広島は新型車両を導入しないまま進んで行くのかと思いましたが、2013年3月にJR西日本が発表した「中期経営計画2017」において、広島都市圏に新型車両を導入することが記されました。これまで走りに走った国鉄車両にも流石に老朽化が進行し、新型車両への置き換えが急務であるという状況、および、広島地区での新型ATSといった新たな保安装置の導入から、227系のデビューへと至りました。

227系の特徴

8両編成の五日市行き by横川駅

車体の外観

まず、車体に関しては、軽量化を目的としたステンレス製をベースとし、運転台は鋼製になっています。運転台部分は2005年に発生した福知山線脱線事故の教訓を活かし、アーバンネットワークで使用されている225系や北陸本線で使用されている521系3次車のような、衝撃を吸収し、車体の変形を最低限に抑える構造を採用しています。

編成に関しては2両(S編成)と3両(A編成)があり、単体での運行の他、これらを組み合わせて4,5,6,8両編成を組成するため、先頭車両にも転落防止幌を設置し、安全性の向上を図っています。前面の顔は521系3次車と同じで、ヘッドライトはHID、テールライトはLEDを採用し、視認性の向上を図っています。

制御装置は三菱または東芝のIGBT素子を用いたVVVFインバータ制御で、当然広島地区のJRでは初めてのインバータ車となります。1車両中に動力台車と付随台車を1台ずつ配置し、運転に必要な機器を1両にまとめて搭載する「0.5Mシステム」を採用している関係で、全車両が電動車となっています。

227系から初めて採用されたもの

227系の導入により、JR西日本で初めて採用されたのが、「フルカラーLED化された種別表示器と行先表示器」です。JR東日本や大手私鉄では既に導入されていましたが、JR西日本は「種別表示器を幕、行先表示器を2色LED」という形をずっと採用していきました(下画像)。

この形式からフルカラーLED化し、種別と行先をひとまとめにしたシンプルな形となっています。導入時、JR西日本はほとんどの路線でラインカラーを採用し始めたので、そのラインカラーにも対応しています。

223系の種別、行先表示器
225系0、5000、6000番台まで採用される。

車内は近郊型電車の標準タイプ

2+2の転換クロスシートとバリアフリー対応のトイレ

従来の3ドア近郊型電車と同様に、2+2の転換クロスシートを採用し、ドア付近には補助イスが備え付けられています。トイレは各編成に1つ、下関側(1番西)の車両に設置されており、バリアフリーに対応した洋式トイレとなっております。トイレのない車端部には車イススペースとロングシートを採用しています。

車内表示器はLCDではなくLEDを採用

近年の新型車両には、鉄道の情報を最大限に提供するため、広告の宣伝効果を高めるために、LCD(液晶ディスプレイ、下画像)を採用しているものが多くなっています。JR西日本は2005年に、アーバンネットワークの通勤型車両である321系を導入した時に初めてLCDの車内表示器を採用し、その後225系や323系にも採用されています(現在は223系にLCDを設置している車両が増えている)。

しかし、227系は225系より新しい車両であるにも関わらず、LCDは採用されず、207系や223系、521系と同タイプのLED車内表示器が採用されました。

LEDが採用された理由として、アーバンネットワークではなく広島シティネットワーク向けに製造されたので、そこまでサービスを提供しなくても良い(?)ということ、LCDは製造コストが高いので、コストダウンを図るためであることが考えられます。

近年はスマホが発達し、運行情報といったサービスもスマホアプリを介して見ることができるようになりましたからね…

225系100番台のLCD

導入から統一までの流れ

❶デビュー(2014年10月〜2015年3月)

3両編成11本(A01~A11)と2両編成2本(S01,S02)が製造され、2015年3月のダイヤ改正によりデビューしました。当時は山陽線の糸崎〜由宇間と呉線の快速安芸路ライナーを中心とした運用に限定されていました。これにより、快速安芸路ライナーで運行されていた103系3両編成を置き換えました。

❷可部線での運行開始、一部の列車および時間帯で統一化(2015年3月〜2016年3月)

この時期には3両編成31本(A12~A42)と2両編成14本(S03~S16)が製造されました。また、2015年10月の運用の修正により、可部線での運行を開始し、今まで可部線を中心に運行されていた105系を置き換えていきました。

2016年3月のダイヤ改正では、新たに山陽線の糸崎〜福山間、由宇〜徳山間でも運行されるようになりました。また、平日昼間時間帯の山陽線(三原〜岩国間)、および呉線、可部線、ならびにこの改正で土休日限定で運行開始した山陽線の快速シティライナーを227系に全て統一しました。

これにより、可部線でほぼ専属で運行されていた105系(非ワンマン対応車、4ドア車)、113・115系の一部を置き換えた他、この改正で広島支社の全ての車両が3ドア車に統一されたため、2ドア車の115系3000番台は岩国〜下関間の限定運用となりました。

❸西日本豪雨の試練を乗り越え、完全統一へ(2018年4月〜2019年3月)

その後は他形式(225系や323系)の製造がメインとなり、一旦間は空きましたが、227系完全統一へ向けてまた増備し始めました。

しかし、2018年夏の西日本豪雨によって各路線が甚大な被害を受け、一部区間で不通になり、復旧に時間を費やしました。製造は関西で行われていたのでストップすることはありませんでしたが、広島地区への移動および運用開始が困難な状況となっていました。懸命な復旧作業により2019年にはほとんどの路線が復活し、同時に最終増備組も広島で続々と運用開始されました。

最終増備組は3両編成22本(A43~A64)、2両編成26本(S17~S42)が製造され、これにより一部残っていた105系、113系、115系を完全に置き換え、2019年3月のダイヤ改正で、山陽線の三原〜岩国間、呉線、可部線の定期列車が全て227系による運用に統一されました。

2019年3月のダイヤ改正で運行を終えた105系
呉線の広〜三原間を中心に運行していた

以上より、登場から僅か4年で、國鐡廣嶋をJR広島に変える革命が起こりました。(芸備線に関しては、依然国鉄型気動車が走っていますが…) 昔から広島のJRを利用していた方たちからすると、信じられないような出来事が起こったと言えるでしょう。

一方で、統一したが故に問題も発生…

広島地区の227系は3両編成64本と2両編成42本の計276両が製造され、広島地区の国鉄型車両を全て置き換えましたが、統一したが故に車両の問題や利便性の悪化が発生しています。どのような面が問題なのかを見て行きましょう。

両数が少なくなったことで混雑が激化

先述の通り、227系は3両編成と2両編成の2タイプがあり、2,3両単体の他これらを組み合わせて4,5,6,8両の編成を組成することができ、需要に応じた柔軟な運行ができるようになりました。しかし、その柔軟さがかえって不便さを生んでしまいました… そのことに関して、まずはこちらの記事をご覧ください。

3両電車、混み過ぎる 山陽線、カープ人気や外国人観光客増加(2019.3.16、中国新聞)

 広島―五日市間を通勤で利用するこの女性。夕方のラッシュ時に来る3両の列車は広島駅で満員となり、次の電車を待つこともしばしばという。体調の悪い日は、諦めて路面電車で帰ることも。「3両だとぎゅうぎゅう詰め。最後の人は背中から乗ってきて尻で押してくるし、ドアが開いた瞬間によろける人もいて危ない。以前の4両に戻してほしい」と訴える。

宮島帰りの観光客と下校の高校生が乗り合わせる夕方の電車では、3両だと乗り切れない人も見掛ける。高校1年女子(16)は「カープの試合がある日はあまりの混雑で2本見送ったこともある。車内で『痛い』『押すな』などと怒声が聞こえることもあり、怖い」とこぼす。

https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=513367&comment_sub_id=0&category_id=1060

このように、ラッシュ時にも3両編成が来ることで、多くの乗客を乗せることができずに積み残しが発生したり、車内が非常に混雑して身動きが取れないといった問題が出ています。

夕ラッシュ時間帯に広島駅を発車する227系3両編成岩国行き
ご覧の通り、車内が大変混雑していることがわかる。

元々山陽線の国鉄型車両(113系、115系)は4両編成で運行されていたため、収容力は特に問題がなかったのですが、227系は4両編成で製造されず、車両運用の都合上3両編成単体で走らざるを得なくなったため、詰め込みが効かずに混雑が悪化し、最悪の場合積み残しも発生してしまう事態になりました。

広島支社運輸課の担当課長は「13年夏に広島への新型車投入を決めた当時は乗客数が現状維持で推移するとみて、山陽線も時間帯によっては3両で大丈夫と考えた」と説明する。

だがその後、乗客が増える誤算が起きた。インバウンド(訪日外国人客)が伸び、広島東洋カープの好調を受け観戦客のJR利用が増加。15年3月開業の新白島駅も1日の乗車人数が15年度7900人、16年度9698人、17年度1万1044人と年々増え、混雑に拍車を掛けた。

https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=513367&comment_sub_id=0&category_id=1060

このように、導入発表当初は3両編成でも問題がないとされていましたが、その後インバウンド需要による宮島を中心とした観光客の増加、広島駅が最寄りのマツダスタジアムを本拠地とする広島東洋カープの人気が高まったことから利用客が増加したことで車両数が不足する事態に陥りました。また、通勤通学においても、2015年3月にアストラムラインとの接続を目的に開業した新白島駅の利用が好調であることも利用客の増加に繋がり、この面でも車両不足の影響が出てしまっています。

私も広島にいた時から両数に関しては問題視しており、車両数が少ないことによる不便さは感じていました。大きな荷物を持って家に帰ろうとしても、乗る列車が3両編成で非常に混雑していたため、周りに特に気をつけながら、ぎゅうぎゅう詰めの車内に入り、すし詰め状態を必死に耐えたりしたこともありました。

今更言っても遅いのですが、なぜ4両編成と2両編成で製造しなかったのか?という疑問は今でも持っています。日本の人口が減少傾向にあったこと、インバウンド需要やカープ人気が予想外すぎたというのも考えられますが、様々な状況を想定した上で3両編成ではなく、4両編成で運行するべきだったと考えます。

ただし、この問題はあくまでも広島市内とその周辺に限った話であるため、編成両数を増やすというよりは、特に利用の多い区間や時間帯において編成両数を増やしたり、増発したりという対応が今のところベストなのかなと思います。

実際にできる範囲での混雑対策は行われている

実際、広島支社では、2019年9月に利用の少ない区間(特に山陽線の西条方面)の本数を減らす代わりに、利用客の多い広島〜五日市間において、夕ラッシュ時間帯に増発するというプチ改正を実施しました。また、今年3月の改正で平日と土休日に分け、平日では広島〜五日市間でさらに増発、土休日は観光需要をメインに快速シティライナーを復活させ、両数も増やすといった対応が行われています。しかし、これで全てが解決したとは言い難い状況ではあるので、今後どのような対応を行うのか注目です。

可部線では車内の構造と路線の特徴に問題も?

山陽線の横川から北に進み、広島市北部のあき亀山までを結ぶ通勤通学路線の可部線も、227系に置き換わったことにより問題が出ています。

先述の通り、227系が導入される前の可部線の車両は国鉄型車両の105系がメインでした。この105系は座席が横並び型のロングシートであったこと、また一部の車両は4ドア車でした。そのため、ラッシュ時間帯の混雑にも十分に対応ができていました。

可部線でも使用されていた105系
(可部線用の写真がないため、和歌山線で走っていた105系で代用)

しかし、227系は3ドアかつ転換クロスシートを採用しているため、従来よりも収容能力は落ちています。そのためラッシュ時間帯は結構混雑しており、特に下祇園以南における混雑が激しくなっています。

夕ラッシュ時の広島駅を発車するあき亀山行き4両編成
新白島、横川の利用者はいるものの、これでも結構混雑している。

和歌山線、万葉まほろば線、きのくに線に導入された1000番台がロングシートを採用しているため、せめて可部線にはロングシートを導入してほしいという個人的な意見もありますが、車両の仕様に応じて限定的な運用を作ることを極力避けているのかもしれませんね。(あくまでも予測にすぎませんが…)

しかも可部線には他線区よりも制約が厳しい路線です。まず、全線が単線のため、簡単に列車の本数を増やすことができません。そして、可部線内に入線できる最大両数が4両までになっているため、ラッシュ対策で増結ができません。(山陽線、)可部線は道路や民家の近くを走行するため、複線化やホーム延伸も不可能です。

こういった制約の中で列車のやりくりしないといけないので、とてもシビアな状況での運行を強いられています。大町〜新白島間はアストラムラインも走っている他、市内からバスも出ているので、一極集中は避けられているとは思いますが、それでも混雑は厳しいのではないかと考えます。こちらもこれからどの方向性を辿っていくのか注目ですね。

乗り換えの手間が増えた

2019年3月に227系に統一されたことにより、広島支社から別の支社に移る時に必ず乗り換えをしなければならなくなりました。統一以前は広島支社から福山や岡山、反対に下関に行く直通列車が設定されていましたが、227系の山陽線での運用範囲が福山〜徳山間であることと、227系で統一されている糸崎〜岩国間での本数を確保しなければならない関係上、糸崎以東や岩国以西で227系を多く使用できないこと、および遅延の拡大防止から、東は三原および糸崎で、西は岩国(一部徳山)で必ず乗り換えなければいけなくなりました。都市間の移動は新幹線でほぼ解決できますが、新幹線の駅から遠い方や新幹線への課金が厳しい方、18キッパーといった方に関しては手間がかかって面倒になったと感じる方もおられるでしょう。特に広島市内から尾道観光に行く時に、尾道の手前で乗り換えないといけないとなった時面倒だなと感じました。

2019年ダイヤ改正で消滅した広島支社から1日1本の三石行き
三石行きの国鉄型電車
福山以東まで行く列車は必ず国鉄型車両が充当される

車両や運用の都合上仕方ないですが、せめて尾道まで227系が常に乗り入れてくれると観光面においてさらに利便性が高まると思うので実現しないかなと密かに願っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

説明あり、私見ありと随分長い記事になってしまいました。しかし、227系は私にとってとても興味を持った車両であり、縁もあって大学時代に227系の発展をずっと見守って来ることができました。

「國鐡廣嶋」のイメージを一新し、広島地区のJRに新たな風をもたらした227系「RED WING」。今後も広島地区の赤い翼として縦横無尽に走り続け、更なる活躍と発展を願っています。

今回はここまでとなります。ご覧いただきありがとうございました!

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