【都心の私鉄で増加中】ロングシートとクロスシート両方に対応できる「デュアルシート」について解説!(10/13更新)

【都心の私鉄で増加中】ロングシートとクロスシート両方に対応できる「デュアルシート」について解説!(10/13更新)

皆様、こんにちは!

チームネットラボのU5swです。

今回は鉄道の話題から、ロングシートとクロスシートの両方に対応できる「デュアルシート」について解説していきます。

ロングシートとクロスシート

鉄道の車両には乗客が座る座席がありますが、その座席の種類は大きく分けて2つあり、ロングシートとクロスシートがあります。

ロングシートとは、座席が横並びになっているもので、大都市のほとんどの通勤型車両やローカル線の車両に採用されています。横長な座席ということでロングシートと言われています。

ロングシートのメリットは、乗客の車両の詰め込みが効くというところにあります。横長な座席なのでスペースを取らず、着席客、立ち客共に多く運べるので、通勤輸送に適しています。

一方で、進行方向に進まないで座るため、車窓が見づらいのと、混雑時には目の前の立ち客に気を遣いながら座ること、座る客が多く狭苦しさを感じることがあります。また、窓の配置上背もたれがないため、主に長距離の移動にはしんどさを感じる部分が多いです。

一畑電車出雲大社前駅に展示されていた
デハニ50型のロングシート

クロスシートは列車の進行方向に合わせて座席が配置されている仕様で、新幹線や特急車両はもちろん、一般の近郊型車両や長距離を走行する車両、無料特急車両に採用されています。

クロスシートの中には向かい合って座るボックスシート、列車の進行方向に合わせて向きを変えられる転換クロスシートや回転式クロスシート、座席を倒して楽な体勢で座れるリクライニングシートなど様々な種類があります。

クロスシートの利点として、進行方向に座れること、2〜4人のお出かけで利用する場合使いやすいことといった主に長距離の区間を利用することに適しています。

一方、座席の配置の関係上、着席できる席と立つスペースが少なくなってしまうため、多くの乗客が利用する路線やラッシュ時間帯には適しません。

JR西日本227系のクロスシート

そのロングシートとクロスシート、両方の役割を果たす座席が登場

ここまでロングシートとクロスシートの特徴とメリット、デメリットについて述べていきましたが、両シートのメリットを最大限に活かすべく、ロングシートとクロスシート両方に対応した座席が登場しました。これが今回紹介する「デュアルシート」です。

デュアルシートの本格採用は近鉄が最初

日本で最初のデュアルシートを実用化したのは近鉄で、主に大阪線や名古屋線の長距離を走行する2610系を改造の上導入されました。

デュアルシートを採用している車両は「L/Cカー」の愛称が用いられ、その後登場した5800系やシリーズ21の5820系にも採用されています。

L/Cカーの近鉄5800系。L/Cカーを示すステッカー(車体の右)が貼られている。

近鉄のデュアルシートに関しては、どの列車がロングシートで、どの列車がクロスシートで運用されるのかは決まってはいません。ただし、昼間時間帯の長距離運転を行う列車はクロスシート、ラッシュ時間帯にはロングシートになる傾向があると考えられます。

近鉄のL/Cカーは大阪線・名古屋線系統と奈良線・阪神直通系統で主に運用されていますが、どの列車が必ずL/Cカーが入るのかはその日次第なところがあります。そのため、時間帯や乗車距離によってはハズレを引いてしまうことも考えられます。

関東の座席指定列車ブームとともに、大手私鉄に続々と登場!

その後、2000年代後半から現在にかけて、関東の大手私鉄でデュアルシートを採用した車両が続々と登場しています。増えている理由としては、都心からベッドタウンを座って通勤通学することができる「座席指定列車」が登場していることが1番の要因です。

小田急のロマンスカーや京成のスカイライナー、西武のLaviewやレッドアロー、東武の特急のように座席指定の列車に特化した列車も存在しますが、車両数の関係や柔軟な運用を実現したいために、

座席指定の列車には「クロスシート」。その他の列車には「ロングシート」。

というように、「座席指定列車」と「一般通勤型列車」との両立を図るために、デュアルシートを採用した車両が増えています。

ここからは、デュアルシートを採用した車両を登場順に紹介していきます!

東武50090型「TJライナー」

準急で運行される東武50090型。

東武50090型は東武東上線の座席指定列車「TJライナー」の専用車両として2008年にデビューした「東武50000系列」の車両です。10両編成で6編成が東武東上線で活躍しています。

東武東上線は池袋を起点とし、川越、坂戸、小川町といった都心のベッドタウンを通る、利用客の多いとても混雑している路線です。しかし、これまで通勤型列車しかなかったため、特にラッシュ時間帯は満員電車、場合によっては常に立ちっぱなしを強いられていました。

その満員電車からのストレスや窮屈さを解消すべく、乗車券とは別に料金を請求しつつも、着席サービスを100%保証し、快適に通勤通学、お出かけをしていただくために「TJライナー」という座席指定列車を池袋〜小川町間に導入し、運行実現に向けて50090型を製造、導入しました。

クロスシートと着席保証で快適性、速達性を大幅UP

TJライナーは、全列車クロスシートの状態で運行されます。進行方向に向かって座り、立ち客をなくして混雑による閉塞感を無くした結果、快適な空間が生まれ、利用者からとても需要のある車両となりました。

登場当初は池袋→小川町(一部森林公園まで)のみの運行で、池袋からの乗車に限り着席整理券を購入の上乗車するというシステムでした(現在は座席指定制を採用している)。

また、池袋を発車してから最初の停車駅であるふじみ野から先は、着席整理券なしでTJライナーに乗車することができるので、お得に利用することができます。

TJライナーの需要が増えたことから、小川町行き(森林公園行き)は改正の度に増便を行った他、朝ラッシュ時間帯の混雑に対応するため、2016年3月の改正で平日に限り森林公園→池袋のTJライナーが登場しました。なお池袋行きは池袋以外の停車駅は全て乗車専用駅となっており、池袋でしか降車できないシステムになっています。

TJライナー以外でもクロスシートで快適に移動できる列車が豊富!

ここまでTJライナーについて説明しましたが、50090型に関してはTJライナー以外でもクロスシートを体験することができます。その列車は以下の通り。

  • 夕方から夜にかけての小川町、森林公園→池袋を走行する快速急行と快速
  • 午前時間帯に池袋→小川町を、夕方に森林公園→池袋を走行する川越特急
  • TJライナー、川越特急の折り返し入庫便として走行する、小川町→森林公園を走行する普通

これを見ると非常に多くの列車でクロスシートでの移動が可能となります。

まず、快速急行と快速に関しては、折り返しがTJライナーとなる運用のため、送り込み運用でもクロスシートとしています。デュアルシートはロングシート↔︎クロスシートの転換にかなりの時間を要する特性があるため、折り返し時間に猶予がないことから、送り込み運用もクロスシートとなっています。

川越特急は最近に登場した、川越観光をメインとした速達列車のことで、50090型のクロスシートで運行される種別です。

小川町→森林公園の普通は、TJライナーまたは川越特急で小川町までやってきた列車を、車庫のある森林公園に返すためにクロスシートの状態で運用されます。この区間は利用者が少ないため、特に運行に支障はありません。

これら3つのタイプに関しては、全区間乗車券のみでクロスシートを体験できる乗り得な列車となっています。それ以外の一般列車は全てロングシートの状態で運行されます。

西武40000系「S-TRAIN」「拝島ライナー」

西武40000系は2017年に登場した車両です。

2017年3月より、西武池袋線から平日は東京メトロ有楽町線を経由し豊洲まで、土休日は東京メトロ副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい21線を経由し元町・中華街までを結ぶ「S-TRAIN」の専用車両として使用開始。平日は都心から西武沿線への通勤需要に、土休日は渋谷や横浜、あるいは秩父といったお出かけの需要に応えた座席指定列車です。

また、2019年からは西武新宿線、拝島線において西武新宿→拝島間を走行する「拝島ライナー」がデビューし、こちらにも40000系が使用されています。新宿〜拝島間をJR中央線、青梅線が並行していることから、その対抗と拝島線沿線の通勤を快適にする意味でデビューしました。

この車両は「S-TRAIN」「拝島ライナー」運行時にはクロスシート、その他の運行時はロングシートで使い分けられています。2020年現在、10両編成6本が在籍しており、うち4編成が池袋線系統(S-TRAIN)、残り2編成が新宿線系統(拝島ライナー)で使用されています。

各座席に電源コンセントを設置、さらにトイレも!

スマホやPCを常時携帯することが日常になった今、近年の新型車両には各座席にコンセントを設置し、スマホやPCを車内で充電しながら使用できる工夫がなされています。なお、40000系はクロスシート時のみコンセントが使用できます。

さらに、関東私鉄の通勤型電車では異例とも言えるトイレが4号車に設置されています。これは「S-TRAIN」において、土休日に1往復のみ、西武秩父〜元町・中華街間を結ぶ長距離列車が運行されていることもあり、長時間の移動を快適にするためにトイレが設置されています。しかも、このトイレは常時使用できるので、普通の通勤通学、お出かけの時にこの車両が来れば、万が一トイレに行きたくなったとしてもわざわざ降車する必要もないので、とても乗り得な列車です。

様々な方に配慮した、パートナーゾーンを設置

40000系の特徴として、10号車(上の写真の先頭車)の運転席側が普通の車両よりも変わっています。写真からも確認できるように、窓が他よりも大きめで、窓枠が黄色になっている場所が「パートナーゾーン」と言われます。

この場所は普通の座席がない代わりに車両の中心部に簡易的な腰掛けスペースを設置し、広い空間を確保しています。これは車椅子やベビーカーを利用している方が、狭苦しさを感じずゆったりと乗車できるように配慮することが1番の目的と言われています。

また、座席がないことから、一般列車としてラッシュ時の通勤通学輸送で乗客が1人でも多く乗車できるようになっているので、マルチな場面で役に立つスペースとなっています。

京王5000系「京王ライナー」

京王5000系は、2017年に登場した車両です。

2018年2月のダイヤ改正で、新宿から京王八王子ならびに橋本を結ぶ座席指定列車、「京王ライナー」が運行開始するにあたって導入されたデュアルシートの車両です。京王ライナー使用時にはクロスシート、それ以外の列車ではロングシートとして運行します。(ただし、新宿行き京王ライナーの折り返し便である各停桜上水行きはクロスシートで運転します)

これまでの京王はロングシートしかない一般型車両しかありませんでした。また、大都会新宿を起点としていること、運賃がとても安いことから多くの乗客が利用しています。そんな中で、近年の座席指定列車ブームの流行に乗り、新宿から多摩地区の方に快適に通勤やお出かけをしてもらいたいということで誕生しました。

2020年現在、10両編成6本が在籍しており、京王ライナーの他、昼間時間帯を中心に一般列車として都営新宿線にも乗り入れます。

車内の蛍光灯の色を使い分け、始発駅ではBGMも流れる

5000系の工夫として、まず列車の使用用途に応じて車内のLED蛍光灯の色を変えることができる点にあります。一般列車(ロングシート)の場合は白色に光るのに対し、京王ライナー(クロスシート)の場合はオレンジ色に光ります。これはオレンジといった暖色系の色を用いることで車内に暖かみや安らぎといった効果を与え、主に通勤客やお出かけに使用される方へリラックスして利用してほしいという効果を与えるためだと考えられます。

また始発駅では、出発前にオーケストラによるオリジナルBGMが流れます。これも一般の列車では味わえない特別感とリラックス効果を与える目的があると考えられます。

その他の特徴としては、電源コンセントを設置していること、クロスシート状態で座っていてもすぐ見られるようにLCDが設置されていることが挙げられます。

通路に合わせて配置されたLCD。

東急6000系、6020系「Qシート」

東急大井町線の急行専用車両6000系。この編成にQシートはない。

東急6000系は2008年から、東急6020系は2017年からそれぞれデビューした東急大井町線の急行専用車両です。2020年現在、6000系は7両編成6本、6020系は7両編成2本が在籍しています。

2018年12月に、平日の夕方から夜にかけての大井町→長津田間を走行する急行の一部列車において、3号車のみを座席指定車両「Qシート」とし、通勤時間帯に座って快適に通勤できる座席がデビューしました。Qシート営業時はクロスシートとして運行し、それ以外の急行列車ではロングシートの状態になるデュアルシートを採用しています(なお、Qシートを運行する前の送り込み運用では、無料でクロスシート状態のQシートを体験できるようです。こっちこそ乗り得ですね)。

全車両を座席指定とせず、急行の一部列車に使用されるという他のライナー列車とは異なる運用を行いますが、Qシートの設備はBGMのない京王ライナーとほぼ同等の設備を備えています。

Qシートは6000系の6101F、6102Fのみ搭載されており、6020系は2編成とも搭載されています。この度の情勢によりQシートの運用は休止されていましたが、10月12日より営業を再開しました。

Qシートの車両。オレンジ一色の車両が際立つ。
Qシートの車内

東武70090型「THライナー」

2020年6月に、東武スカイツリーラインと東京メトロ日比谷線を直通する座席指定列車「THライナー」がデビューしました。そのTHライナーに使用される列車が同年3月にデビューした東武70090型です。

70090型は東武70000系列の車両で、日比谷線直通車両の4ドア7両編成に統一するために2017年に70000型が導入されました。70000型がロングシート車に対し、70090型はデュアルシートを採用しています。

一般型タイプの東武70000型。この車両は普通列車のみで使用される。

THライナー運行時のみクロスシートで、普通列車の場合はロングシート車で運行されます。

THライナーは朝に久喜→恵比寿間、夕方から夜にかけて霞ヶ関→久喜間で運行されています。霞ヶ関や銀座、上野といった都心と、新越谷、せんげん台、春日部といったベッドタウンを座って快適に通勤やお出かけできる、日比谷線直通待望の座席指定列車になりました。

デュアルシートのメリットとデメリット

ここまで、デュアルシートに関して、各路線の使用用途を交えながら説明していきましたが、ここで、デュアルシートのメリットとデメリットについてまとめてみました。

メリット

ライナー列車から一般の各駅停車から優等種別まで幅広く使用できる

メインはこれに尽きると思います。ライナー列車だけに限ってしまうと運用が限定的になってしまって使いづらくなってしまったり、既存車両の置き換えができず車庫の容量がオーバーしてしまうといった問題が起こってしまいます。その問題をデュアルシートで解決できるので、柔軟な運用を組めたり、車庫の容量を心配する必要性がなくなります。

課金してでも座って通勤やお出かけができる

デュアルシートの恩恵を特に受けている首都圏の私鉄にとって、ラッシュ時の混雑や立っての通勤をしなくて済むライナー列車は、ストレスや疲労を減らす上で十分役に立っています。今年にとっては感染症対策にも十分有効ですね。

もちろん、課金しなければ利用できないので、バランスは大事ですが…

また、ロングシート状態での運行も、一般のロングシートとは違って快適性に優れるので、乗り得に感じる方もおられるのではないでしょうか。

デメリット

一般のロングシート車よりも乗車定員が少なく、ラッシュ時には若干不利になる

デュアルシートはロングシートとクロスシートを切り替えて運行するため、切り替える上でスペースを多く必要とします。

一般のロングシート車(4ドア車)は7人がけのシートなのに対し、デュアルシート車の場合はクロスシート時に2人がけ3列の状態で運行されるため、ロングシートの場合は6人がけとなります。つまり、座席に座れる人数が少なくなるため、その分乗車定員も少なくなってしまいます。

デュアルシート車とロングシート車を比較するために、東武東上線の50090型と50000型を比較すると、50090型ロングシート状態の場合の乗車定員数は1330名なのに対し、50000型に関しては1504名と差は174名分あります。クロスシート状態よりは定員を確保できるものの、他の一般車両よりは収容力の面でどうしても劣ってしまいます。

リクライニング機能がないため、新幹線や特急車両よりは快適性が低い

あくまでも通勤型車両のため致し方ないですが、リクライニング機能で更に快適に過ごしたい方にとってはリラックスできないという思いを持つ方もおられるでしょう。

また、中には座席が硬すぎて全然快適に座れないと思う方もおられるでしょう。特に東武50090型の座席の硬さは有名ですね…私自身乗ったことがないので実感はありませんが、E231系並みかそれ以上に硬いんだとか?

改造には簡単に踏み切ることができませんが、サービス改善に努めて欲しいなとは個人的に思います。

まとめ:デュアルシートの需要は年々大きくなっている

いかがでしたでしょうか?

今回はロングシートとクロスシートの両方に対応できるデュアルシートについて説明しました。

上記以外にもしなの鉄道の新型車両SR1型が採用していたり、現在はロングシート状態のみですが、JR仙石線の205系にも使用されていたりと、デュアルシートの需要は大きくなっています。

私自身も、ライナー列車に限定されず、各駅停車から優等列車まで活躍できる車両の存在は大きいと思いますし、今後も様々な線区で採用されるのではないかと考えています。

ある時は座席指定列車として、ある時は一般の通勤列車としてマルチに活躍するデュアルシートについて、今後も注目していきましょう!

今回はここまでとなります!ご覧いただきましてありがとうございました!

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