皆様、こんにちは。
チームネットラボのU5swです。
今回は2022年に開業予定の「相鉄・東急直通線」について紹介していきます。
相鉄の概要と都心直通プロジェクト
相鉄(相模鉄道)は、横浜と海老名、湘南台を結ぶ大手私鉄の中ではとても小規模な私鉄で、関東の大手私鉄の中では唯一東京都に路線を持たない私鉄でした。
しかし、都心に相鉄の魅力をアピールすべく、都心直通プロジェクトを敢行し、他社線との相互直通運転を行う形で相鉄の都心進出を進めていきました。
その第1弾として、2019年11月30日に、「相鉄・JR直通線」が開業し、神奈川中部の都市海老名から大和、二俣川を通り、西谷で相鉄本線と別れ、羽沢横浜国大からJR線に乗り入れ、武蔵小杉、渋谷、新宿方面へダイレクトに結ばれるようになりました。この直通は相鉄にとって1つの革命になりました。
相鉄・東急直通線とは?
相鉄・JR直通線によって都心に顔を出すようになった相鉄。しかし、都心直通プロジェクトはまだ終わっていないことをご存知でしょうか?実はJR線以外にも乗り入れを計画している路線があります。
それが、今回紹介する「相鉄・東急直通線」です。
相鉄・東急直通線は、相鉄本線の西谷から羽沢横浜国大を経由して新横浜に向かい、そこから東急東横線ならびに東急目黒線の日吉駅までを結ぶ直通線を指します。そのうち、西谷〜新横浜間を「相鉄新横浜線」、新横浜〜日吉間を「東急新横浜線」として運行します。羽沢横浜国大〜日吉間において、2022年度の開業に向けて工事が進められています。
相鉄・東急直通線がもたらすメリット
ここで、相鉄・東急直通線が開業することによってどんなメリットが生まれるのかをまとめてみました。
新横浜へのアクセスが大幅に向上!
まずは何と言ってもこれでしょう。2021年現在、新横浜には東海道新幹線、JR横浜線、横浜市営地下鉄ブルーラインが乗り入れています。新幹線から横浜、桜木町方面、対して中山、町田、相模原、八王子、あざみ野といった横浜市北部、多摩地区へのアクセスは確保されています。
しかし、二俣川や大和を始めとした相鉄沿線からのアクセスが悪く、一旦横浜に出て横浜線に乗り換えないといけません(海老名や大和から小田急で町田に出て横浜線に乗り換えるのも手だが遠回り、湘南台から横浜市営地下鉄ブルーラインに乗っても戸塚や上大岡、関内を経由する遠回りである)。
また、東急線側も田園調布や武蔵小杉から新横浜へ行くにも、菊名で横浜線への乗り換えを強いられるため、格段にアクセスが良いとも言えません。
しかし、直通線の開業によって相鉄沿線や東急沿線からダイレクトにアクセスでき、新幹線をより早く便利に利用できるようになります。相鉄沿線はもちろんのこと、東急沿線も菊名乗り換えがなくなり利便性が大幅に向上するでしょう。事実、新横浜はのぞみ号を含めた全ての列車が停車するので、遠方へのアクセスはもちろん向上します。
相鉄沿線から目黒、そして都心へダイレクト!
相鉄・東急直通線の開業により、相鉄は東急東横線、目黒線に乗り入れることとなります。また、目黒線系統においては東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線、都営三田線との直通運転を行うこともほぼ決定しております(一方、東横線系統はどこまで乗り入れるのかがわかっていない)。
そのため、目黒線系統は武蔵小山や目黒へのアクセスはもちろん、南北線で六本木や麻布十番、三田線で大手町、神保町といった都心の中心部へダイレクトに繋がります。
また、東横線系統は自由が丘や中目黒といった街にダイレクトにアクセスができる他、JR直通線が迂回ルートを辿っていることもあり、武蔵小杉や渋谷と相鉄沿線の所要時間を短縮することができると考えられます。仮にJR線内でトラブルがあり、運転見合わせや遅延が発生しても代替ルートが確保されるので、利便性は最低限保たれるようになります。
相鉄・東急直通線の運行形態予測と乗り入れ予定車両
日中のダイヤ予測
ここで、相鉄・東急直通線の運行形態を自分なりに予測してみたので紹介していきます。東急電鉄のホームページによると、日中時間帯の直通線は1時間あたり4〜6本の運行を予定しているとのことです。この予定本数に合わせつつ、東横線、目黒線両方に乗り入れることを想定した上で予測をしてみます。
- 和光市〜海老名 2本(副都心線内各駅停車、東横線・相鉄線内特急)
- 西高島平〜湘南台(海老名) 2本(目黒線内急行、相鉄線内各駅停車)
- 浦和美園、赤羽岩淵〜湘南台(海老名) 2本(各1本)(目黒線内急行、相鉄線内各駅停車)
東横線直通に関しては、10両編成で製造されている相鉄20000系を有効活用し、速達性と相鉄〜東急間の種別の統一も考慮して特急としました。実際に副都心線直通するかはまだわかりませんが、副都心線の終着駅和光市に検車区があることを考慮すると、和光市まで乗り入れた方がダイヤ乱れや急な運用変更が発生しても車両交換等で融通が利くと考えたのでこのようにしてみました。
目黒線直通に関しては、速達性も加味した上で目黒線内急行とし、8両編成であることから相鉄線内は各駅停車としての運行が望ましいと考えました(実際、快速、急行、特急でも8両編成の運用は存在しますが)。また、いずみ野線の方が利用者が少ないので、空気輸送を減らすという意味でいずみ野線に直通する列車として入れてみました。
直通列車が増える代わりに、横浜発着の各駅停車の数本を西谷発着に短縮し、西谷の二俣川方にある、本線と引き上げ線のポイント通過に制約がかからないことを考慮しています。西谷以西の新横浜、東急線アクセスを良くすることをアピールためにも(?)この形を取っています。
東横線系統は横浜、元町・中華街と副都心線、西武線、東武線を結ぶルートが主流なので、直通線乗り入れ列車は上記の特急のみとします。
一方目黒線は新横浜線を目黒線の延長と考え、目黒線急行に加えて新横浜発着の各駅停車を4本走らせることで目黒線内から1時間あたり8本、武蔵小杉からだと東横線直通を加えて10本が新横浜へダイレクトに繋がることを考えています。新横浜は折り返し可能な線路を真ん中に設けた2面3線の構造で造られるため、折り返しは容易にできます。目黒線各駅停車の残り4本は日吉に引き上げ線が1本残されることから、日吉折り返しになると考えられます。
また、日吉と新横浜の間の新駅である新綱島(2020年12月に正式決定)は、すぐそばにある綱島が急行停車駅のため、同じく急行停車駅になるのではないかと考えています。一方で特急と通勤特急(乗り入れたらの話)は新綱島を通過すると考えます。
乗り入れ予定車両を予測
東急東横線系統(乗り入れると仮定)
- 相鉄20000系(10両編成)
- 東急5050系(4000番台の10両編成)
- 東京メトロ10000系?
- 東京メトロ17000系(10両編成)?
東横線系統はまずどこまで乗り入れるかが不明(そもそも乗り入れるかが不明)ですが、西武鉄道と東武鉄道が相鉄の乗り入れに消極的ですし、西武車や東武車に関しても乗り入れ対応がなく、今後進む気配がないため、最長でも和光市、最短でも渋谷までと考えます。
相鉄20000系は登場当初から西武、東武に対応できるよう保安装置が設置されていますが、線路使用料の相殺や遅延拡大防止のため乗り入れる可能性は低いでしょう。
また、副都心線の車両に関しても、2021年現在対応工事の気配がないのでなんとも言えません。10000系が36編成、最近デビューした17000系は6編成(10両、現在7000系置き換え中)の計42編成が運用に入っていますが、メトロ車は有楽町線の運用を始め幅広く使用されるため、編成数は多いですが相鉄直通に車両を回す余裕は現段階ではないものと考えられます。もしメトロ車が相鉄に乗り入れるとなると、17000系をさらに追加投入することが考えられますが、2021年現在では古い7000系の置き換えのためだけに新造されているため、可能性は低いでしょう。
ちなみに、新型車両17000系の機器には相鉄の乗り入れに対応できる準備工事らしきものはあるらしいですが…
一方、東急5050系4000番台は2021年現在、相鉄対応工事をまだ行なっていないため、これからどうなるのか目が離せません。相鉄との線路使用料の関係から、東横線乗り入れが正式に決まれば対応工事は行われるものと考えています。
気になるのは相鉄乗り入れによって車両が足りるのかが気になるところです。現在5050系4000番台は11編成あり、ほとんどがFライナーを中心とする広範囲な運用に就いているため、こちらも相鉄直通の運用に回す余裕はあまりないと言っていいでしょう。可能性として考えるのであれば、相鉄直通対応専用車を新造(形式は4020系?)するか、東急田園都市線で走っている5000系を、東急8500系置き換え用に増備している2020系に置き換える形で転属させることが考えられます。実際、田園都市線は2021年3月のダイヤ改正で、日中を中心に減便を行っているため、車両が余る可能性が高いこともあり、その車両を有効活用するのではないかと考えています。
東急目黒線系統
- 相鉄20000系(8両編成)
- 東急3000系(2021年3月現在相鉄対応工事中、中間車新造予定)
- 東急3020系(新製時点で8両対応、相鉄対応済み)
- 東急5080系(相鉄対応工事予定、中間車新造予定)
- 東京メトロ9000系(B修完了車以外は相鉄対応工事予定、中間車新造予定)
- 都営6300形(3次車のみ相鉄対応工事、1,2次車の中間車を組み込む予定?)
- 都営6500形(8両で新製)
- 埼玉高速2000系?(中間車新造はなく、相鉄直通せず新横浜までになる予定)
一方目黒線は乗り入れが確定しています。まず、目黒線系統自体は混雑解消に取り組んでおり、現在は6両編成を8両編成に増強するための工事が目黒線、南北線、都営三田線、埼玉高速線で行われています。これに合わせて、一部車両を除き従来車を8両編成に増結ならびに置き換えを進めています。
東急車は3000系がJ-TRECによって改造工事が施行されており、相鉄直通対応機器の取り付けや、運転台、内装のリニューアルも行われています。3000系の工事が完了次第、5080系も工事が行われるものと思われます。また、中間車2両の新造も行われる予定であり、一部の中間車は、東急大井町線の急行用車両として使用されている6000系の、Qシート導入時に置き換えられた中間車を活用すると言われており、その他は完全新製(または他編成からの中間車組み込みも?)となるでしょう。
メトロ車は9000系のB修繕車に関しては、引き続き6両編成のまま使用される予定ですが、その他の編成は改造工事と共に中間車2両を組み込んだ8両編成となり、相鉄にも顔を出す予定となっています。(一部界隈では、半蔵門線の8000系を活用するという声も出ていますがどうなんでしょうか…?)
都営車は前期の6300形が後継車両の6500形に置き換えられることが決定しており、後期の6300形は引き続き残る模様です。気になるのは後期の6300形が6両編成のままなのか、中間車2両を組み込んだ8両編成となるのかですが、個人的な予測として、置き換えられる前期の6300形の中間車を活用して8両化されるのではないかと考えられます。いずれは相鉄直通対応と同時に改造工事が施行されると思いますし、なるべく8両編成に統一した方が利用者の混乱を招かずに済むと思いますので、有効活用されると踏んでいます。
埼玉高速車は2000系が8両編成に対応できるようにはなっていますが、開業後も6両編成のままと言われています。埼玉高速鉄道が赤字路線ということもあり、車両を増やす余裕がないものと考えています。そのため、新横浜までの乗り入れに留まるでしょう。
一方相鉄車は8両編成バージョンの20000系(20050番台と予想)が9本新造予定であり、目黒線、メトロ南北線、都営三田線にも直通する予定です。問題は埼玉高速に乗り入れるのかが疑問ですが、線路使用料の観点から、南北線との境界駅、赤羽岩淵までの乗り入れに留まる可能性も考えられます。ただし、トラブル発生時に乗り入れる可能性も考えられるので、その点にも注目して行きたいですね。
相鉄・東急直通線の課題と懸念
ここまで主にメリットや予測をしていきましたが、一方で課題や懸念もあるので紹介しておきます。
工事箇所の陥没が目立ち、開業に間に合うのか?沿線に影響が出ないかが不安
相鉄・東急直通線工事、判明した「陥没」の要因 | 通勤電車 | 東洋経済ONLINE
2020年6月、直通線の建設現場において2度の陥没事故が起こってしまいました。陥没は工事関係者、沿線の方に迷惑を与えかねない一種の事故ですので、今後の建設、整備に不安を残すこととなっています。地盤を固める対策を施し、現在は工事を再開しているとのことですが、今後も陥没に配慮する必要があるため、最悪開業が遅れることも十分想定できます。
直通線はほとんどが地下のため、地下トンネルの掘削は決して容易なことではありませんが、開業に影響が出ないよう、安全に工事を進めていただきたいですね…
相互直通運転にはつきもの、遅延拡大のリスク
相互直通運転の懸念材料の筆頭である遅延拡大、今回の直通線で更にリスクが高くなってしまいます。特に危険なのが、
- 東横線に乗り入れた場合の影響の受けやすさ
- JR直通線の影響の大きさが尋常じゃない
まず東横線系統に関しては、みなとみらい線、副都心線、西武線、東武線と乗り入れ路線が多い他、小竹向原からは有楽町線が合流、西武練馬、東武和光市は池袋を発着とする自社完結の路線も走っています。そのため、どこか1ヶ所で電車がストップするだけで、その影響をモロに食らってしまいますし、相鉄線内でダイヤ乱れが発生したら東横線をはじめとする路線に影響を与えかねません。もちろん、目黒線系統でも同じことが言えますが…
次に相鉄がJRとも乗り入れていることです。JR直通線は東海道貨物線や横須賀線、埼京線に乗り入れる形で運行しているため、開業してから遅延があった場合、その影響を大きく受けてしまっています。
1番最悪なのが、JR線内の遅延の影響が相鉄線内にも広がったことで、一見関係のない東急線やその乗り入れ路線にも被害が出てしまうことです。仮にそうなってしまうと考えると、非常に恐ろしいですね…
非常事態が起きた場合にどのような策を取るのか、各会社によってどのような対応を取るかで大きく変わって行きそうです。
東横線に限れば、乗り入れするメリットが少ない。JR線の利用者が更に落ちる可能性も高い。
また、東横線に関してはそもそも乗り入れるメリットが少ないのでは?という見解もあります。その理由として、
「JR直通線とのルートがほぼ被ってしまっている」
ということです。JR線と東横線共に、武蔵小杉、渋谷でダブついていますし、副都心線に乗り入れるとなっても新宿、池袋で被ってしまっています。これにより、相鉄沿線から武蔵小杉や渋谷に行くとなった場合、どっちに乗ればいいのかということで利用客を混乱させたり、誤乗車を招いてしまう恐れがあります。
また、渋谷に関してはJR線が2階相当の高架ホームに発着するのに対し、東横線は副都心線との直通運転により地下5階に発着するので、渋谷に行く方からすると、地下5階から地上に上がるのに多くの時間を要してしまうという懸念もあります。そもそも副都心線が2008年開業の新しい路線ということもあり、ほとんどのホームが地下深くにある他、新宿も丸ノ内線or都営新宿線で1駅隣の新宿三丁目にあることを考えるとあまりメリットはないのかなと感じます。新宿三丁目の方がアクセスが良いというのもありますが、渋谷を境に鉄道会社も東京メトロに変わるため、運賃も高くなってしまいます。
JR直通線が迂回していることもあり、武蔵小杉や渋谷への所要時間短縮や、東急の運賃の安さから需要も見込めることも考えられますが、トータルで見ると新横浜へのアクセス向上以外メリットがないということもあります。
JR直通線の乗り入れ先を渋谷、新宿から品川、東京に変えるという策も考えられますが、東京駅総武線ホームの線路容量や、埼京線E233系7000番台の活用をどうするのかが課題ですし、そもそも横浜まで出て東海道線で行くのが早いのではというのもありますのでなんとも言えません(そもそも東京進出をJR側が拒否したということも)。また、JR直通線の開業によって、停車本数の恩恵を受けた武蔵小杉、西大井〜大崎、恵比寿、渋谷、新宿の方に再び不利益を被ってしまうことにもなりかねません。
無理に相鉄と東横線の乗り入れを行う必要があるのか?という疑問も
そもそも、東横線の直通を新横浜までに留め、田園調布〜日吉間で東横線と目黒線が対面乗り換えできる構造を活かせば、無理に乗り入れさせなくてもいいという案も考えられます。
当初は私も「相鉄乗り入れは目黒線だけにした方がいいのでは?」と考えていました。遅延のリスクが更に大きくなるのと、目黒線は田園調布〜日吉間で並走しており、かつ武蔵小杉ではS-TRAINを除く全列車が停車し、田園調布方面および日吉方面で対面接続するため、1回の乗り換えで完結できます。また、副都心線、西武線、東武線、みなとみらい線と乗り入れ路線が多すぎる、かつ東横線の本数が多いので、相鉄直通に回す車両やダイヤに余裕があるとは思えません。
仮に東横線直通がない場合、20000系10両編成はどうなるの?って思う方もいられると思いますが、そもそも20000系は東急直通以外にも相鉄新7000系や相鉄8000系、9000系の置き換えの役割も果たしていますので、乗り入れがなくなっても完全に役割がなくなることはないでしょう。車両を持て余すことにはなりますが…
まとめ:不安な点は多いが、相互直通運転は楽しみである
いかがでしたでしょうか?
今回は相鉄・東急直通線について説明していきました。
相互直通運転はメリット、デメリット両方ともつきものですし、うまくバランスをとって行けば大きな効果を生むことができます。
相鉄、東急の新横浜進出、乗り入れ車両の豊富さなど、楽しみな部分が多い今回の直通線と相互直通運転。開業する日を楽しみに待ちましょう。
今回はここまでとなります。ご覧いただきましてありがとうございました!